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歯科レントゲンの安全性:正しく理解して不安を解消しよう


歯科レントゲンの安全性:正しく理解して不安を解消しよう

はじめに

歯科医院でレントゲン撮影を勧められると、放射線被ばくが心配になる方は少なくありません。特に妊娠中の方や小さなお子さんをお持ちの保護者の方は、不安を感じることが多いでしょう。しかし、歯科レントゲンの放射線量は非常に微量であり、適切に使用される限り、安全性は十分に確保されています。むしろ、レントゲンを撮らないことで、目では見えない虫歯や病変を見逃し、結果的により大きな治療が必要になるリスクの方が高いのです。この記事では、歯科レントゲンの種類、放射線量の実際、他の日常的な被ばくとの比較、安全対策、そして妊娠中や子どもへの影響について、科学的根拠に基づいて詳しく解説します。正しい知識を持つことで、不安を解消し、安心して必要な検査を受けられるようになりましょう。

歯科レントゲンの種類と目的

口内法エックス線撮影

最も一般的なレントゲン撮影で、小さなフィルムやセンサーを口の中に入れて撮影します。1本から数本の歯を詳しく見ることができ、虫歯の深さ、根の状態、歯周病の進行度などを確認するのに適しています。

パノラマエックス線撮影

顔の周りを機械が回転しながら、顎全体を一度に撮影する方法です。すべての歯、顎の骨、顎関節、副鼻腔などを広く観察でき、全体的な口腔内の状態把握に役立ちます。初診時や矯正治療前などによく使用されます。

CT撮影

3次元的に顎の骨や歯の構造を詳細に観察できる撮影方法です。インプラント治療、親知らずの抜歯、根管治療など、より精密な診断が必要な場合に使用されます。通常のレントゲンより放射線量は多くなりますが、それでも安全な範囲内です。

セファログラム

矯正治療で使用される、頭部の側面や正面を撮影するレントゲンです。骨格の状態や歯の位置関係を分析するために用いられます。

歯科レントゲンの放射線量

具体的な数値

歯科レントゲンの放射線量は非常に少量です。口内法エックス線撮影は1回あたり約0.01ミリシーベルト、パノラマ撮影は約0.03ミリシーベルト、歯科用CTでも約0.1ミリシーベルト程度です。

これらの数値は、国際放射線防護委員会(ICRP)が定める安全基準を大きく下回っています。

日常生活との比較

私たちは日常生活でも、自然界から常に放射線を浴びています。これを自然放射線と呼び、日本では年間約2.1ミリシーベルト被ばくしています。つまり、1日あたり約0.006ミリシーベルトです。

口内法エックス線撮影1回の被ばく量は、自然放射線の約2日分に相当します。パノラマ撮影でも約5日分、歯科用CTでも約2週間分程度です。東京とニューヨークを往復する飛行機に乗ると、約0.2ミリシーベルト被ばくしますが、これは歯科用CTの約2倍にあたります。

他の医療被ばくとの比較

胸部エックス線撮影は約0.05ミリシーベルト、胃のバリウム検査は約3ミリシーベルト、胸部CTは約6.9ミリシーベルトです。歯科レントゲンは、他の医療用レントゲンと比較しても、非常に少ない放射線量であることが分かります。

デジタルレントゲンのメリット

近年、多くの歯科医院でデジタルレントゲンが導入されています。デジタルレントゲンは、従来のフィルムレントゲンに比べて、放射線量を約10分の1から4分の1に削減できます。これにより、さらに安全性が向上しています。

また、デジタルレントゲンは画質が良く、拡大や色調整が可能なため、より正確な診断ができます。現像の必要がなく、すぐに画像を確認でき、環境にも優しいというメリットもあります。

歯科医院での安全対策

防護エプロンの使用

歯科医院では、レントゲン撮影時に鉛入りの防護エプロンを着用します。これにより、甲状腺や生殖器など、放射線に敏感な臓器を保護します。特に妊娠中の方や子どもには必ず使用されます。

適切な照射範囲の設定

最新の歯科レントゲン機器は、必要な部位だけに照射できるよう、照射範囲が最小限に制限されています。これにより、不要な被ばくを避けることができます。

撮影の必要性の判断

歯科医師は、診断に本当に必要な場合にのみレントゲン撮影を行います。単に習慣的に撮影するのではなく、臨床的な必要性を慎重に判断しています。

定期的な機器の点検

レントゲン機器は定期的に点検・校正され、適切な線量で撮影できるよう管理されています。また、スタッフも放射線に関する教育を受けています。

妊娠中の歯科レントゲン

妊娠中のレントゲン撮影を心配される方は多いですが、歯科レントゲンは妊娠中でも基本的に安全です。

胎児への影響

歯科レントゲンの照射部位は口腔内であり、子宮からは十分に離れています。また、防護エプロンを使用することで、腹部への被ばくはほぼゼロになります。歯科レントゲンによる胎児への放射線量は、胎児奇形のリスクが生じるとされる線量の数千分の1以下です。

妊娠時期による配慮

それでも不安な場合や、緊急性がない場合は、妊娠初期を避けて安定期に撮影することも可能です。ただし、痛みがある、膿が溜まっているなど、治療が必要な場合は、妊娠中でもレントゲン撮影を行い、適切な治療を受ける方が、母体と胎児の健康にとって重要です。

妊娠していることは必ず歯科医師に伝えましょう。その上で、撮影の必要性やタイミングについて相談できます。

子どもの歯科レントゲン

子どもは放射線に対する感受性が大人より高いため、保護者の方が心配されるのは当然です。しかし、歯科レントゲンの放射線量は非常に少なく、適切に使用される限り、子どもにも安全です。

子どもへの配慮

子どもの場合、撮影時間をできるだけ短くし、撮影回数も最小限にします。また、防護エプロンの使用は必須です。成長期の子どもは、虫歯の進行が速く、乳歯の下に永久歯が隠れているなど、レントゲンでしか分からない情報が多くあります。

適切な診断のために

レントゲンを撮らないことで、隠れた虫歯を見逃し、永久歯に影響が及んだり、大きな治療が必要になったりするリスクの方が高いと言えます。子どもの健康な成長のために、必要なレントゲン撮影は受けることが推奨されます。

レントゲンを撮るメリット

早期発見・早期治療

レントゲンにより、目では見えない部分の虫歯、歯の根の病気、顎の骨の異常などを早期に発見できます。早期発見できれば、簡単な治療で済み、痛みも少なく、費用も時間も抑えられます。

正確な診断

歯の根の形状、神経の位置、骨の状態など、レントゲンなしでは分からない情報が多くあります。これらの情報により、より正確で安全な治療計画を立てることができます。

治療の確認

治療後の状態を確認するためにもレントゲンは有効です。根管治療が適切に行われたか、詰め物が正しく入っているかなどをチェックできます。

レントゲンを避けることのリスク

レントゲンを避けることで、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

隠れた虫歯を見逃し、神経まで達する大きな虫歯になる、歯の根の病気が進行し、抜歯が必要になる、顎の骨の中の病変を見逃す、不適切な治療により合併症が起こるなどです。

これらのリスクと、歯科レントゲンの微量な放射線被ばくを比較すると、適切にレントゲンを使用する方が、はるかに利益が大きいと言えます。

国際的な見解

世界保健機関(WHO)、国際放射線防護委員会(ICRP)、アメリカ歯科医師会(ADA)など、世界中の権威ある機関が、歯科レントゲンの安全性を認めています。適切に使用される限り、健康へのリスクは無視できるほど小さいとされています。

また、診断のメリットが被ばくのリスクを大きく上回る場合にのみ、レントゲン撮影を行うという原則(正当化の原則)が国際的に確立されています。

不安がある場合の対処法

レントゲン撮影に不安がある場合は、遠慮なく歯科医師に相談しましょう。なぜこの撮影が必要なのか、どれくらいの放射線量なのか、撮影しない場合のリスクは何かなど、納得できるまで説明を求めることができます。

また、過去の被ばく歴や妊娠の可能性など、気になることがあれば事前に伝えてください。歯科医師はそれらを考慮した上で、最善の判断を行います。

まとめ

歯科レントゲンの放射線量は非常に微量であり、日常生活で浴びる自然放射線や他の医療被ばくと比較しても、はるかに少ない量です。デジタルレントゲンの普及により、さらに被ばく量は減少しています。防護エプロンの使用、適切な照射範囲の設定など、安全対策も徹底されています。妊娠中や子どもでも、適切に使用される限り安全です。レントゲンにより早期発見・早期治療が可能になり、正確な診断ができるメリットは、微量な被ばくのリスクをはるかに上回ります。不安がある場合は遠慮なく歯科医師に相談し、納得した上で撮影を受けましょう。正しい知識を持ち、必要な検査を適切に受けることが、歯の健康を守ることにつながります。

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