歯ぎしりの原因と対策:歯を守るための完全ガイド

はじめに
「朝起きると顎が疲れている」「家族から歯ぎしりを指摘された」「歯が削れてきた気がする」こんな症状に心当たりはありませんか。実は、日本人の約10パーセントから20パーセントが歯ぎしりをしているとされており、多くの人が無自覚のまま、歯や顎に大きな負担をかけています。歯ぎしりを放置すると、歯の摩耗、歯の破折、顎関節症、頭痛、肩こりなど、様々な問題を引き起こします。しかし、原因を理解し、適切な対策を講じることで、これらのトラブルを防ぐことができます。この記事では、歯ぎしりの原因、症状、そして効果的な対策方法について、歯科医師の視点から詳しく解説していきます。
歯ぎしりとは
定義
歯ぎしり(ブラキシズム)とは、無意識のうちに歯を強く噛みしめたり、こすり合わせたりする行為です。主に睡眠中に起こりますが、日中に起こることもあります。
種類
歯ぎしりには、主に3つのタイプがあります。
グライディング(歯ぎしり)
上下の歯をギリギリとこすり合わせる動きです。音が出るため、家族に指摘されて気づくことが多いです。
クレンチング(食いしばり)
音は出ませんが、強く歯を噛みしめる動きです。無意識に行われるため、自覚しにくいです。
タッピング
上下の歯をカチカチと打ち鳴らす動きです。比較的少ないタイプです。
歯ぎしりの原因
ストレス(最も大きな原因)
歯ぎしりの最も大きな原因は、精神的ストレスとされています。日中に溜まったストレスや不安、緊張を、睡眠中に歯ぎしりという形で発散していると考えられています。
仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、生活環境の変化などが、歯ぎしりを引き起こす要因となります。
噛み合わせの異常
歯並びや噛み合わせに問題がある場合、無意識に理想的な噛み合わせを探そうとして、歯ぎしりをすることがあります。
睡眠の質の低下
浅い睡眠や、睡眠時無呼吸症候群などにより睡眠の質が低下すると、歯ぎしりが起こりやすくなります。
アルコールやカフェインの摂取
アルコールやカフェインの過剰摂取は、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを悪化させることがあります。
喫煙
喫煙者は、非喫煙者に比べて歯ぎしりをする頻度が高いという研究結果があります。
特定の薬の副作用
抗うつ薬など、一部の薬の副作用として歯ぎしりが起こることがあります。
遺伝的要因
家族に歯ぎしりをする人がいる場合、遺伝的に歯ぎしりをしやすい傾向があるとされています。
歯ぎしりの症状とサイン
歯の摩耗
歯ぎしりを長期間続けると、歯の表面が平らに削れたり、エナメル質が薄くなったりします。
歯の破折
強い力がかかることで、歯が欠けたり、ヒビが入ったり、割れたりすることがあります。
知覚過敏
歯が削れてエナメル質が薄くなると、冷たいものや甘いものがしみる知覚過敏の症状が出ます。
顎の痛みや疲労感
朝起きた時に、顎が疲れている、痛い、だるいと感じることがあります。
顎関節症
長期間の歯ぎしりにより、顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症することがあります。口を開けにくい、開ける時に音がする、痛みがあるなどの症状が現れます。
頭痛
歯ぎしりにより、こめかみや頭の筋肉が緊張し、頭痛を引き起こすことがあります。特に、朝起きた時の頭痛が特徴的です。
肩こり・首こり
歯ぎしりで顎周りの筋肉が緊張すると、その影響が首や肩にも広がり、肩こりや首こりを引き起こします。
歯ぐきの後退
強い力が歯にかかることで、歯を支える骨や歯ぐきがダメージを受け、歯ぐきが下がることがあります。
詰め物や被せ物が取れやすい
歯ぎしりの強い力により、詰め物や被せ物が外れやすくなります。
歯ぎしりの診断方法
自己チェック
朝起きた時に顎が疲れている、歯が削れている、家族に指摘されたなどの症状がある場合、歯ぎしりをしている可能性があります。
歯科医師による診断
歯科医師は、歯の摩耗の状態、筋肉の張り、顎関節の状態などから、歯ぎしりの有無を判断します。
睡眠ポリグラフ検査
専門的な診断が必要な場合、睡眠中の筋肉の活動を記録する検査を行うこともあります。
歯ぎしりの対策
マウスピース(ナイトガード)の使用
最も効果的な対策が、マウスピース(ナイトガード)の使用です。歯科医院で歯型を取り、個人に合わせて作製します。
就寝時に装着することで、歯ぎしりによる歯や顎への直接的なダメージを防ぎます。歯ぎしり自体を止めることはできませんが、歯を保護する効果があります。
市販のマウスピースもありますが、フィット感や効果の面で、歯科医院で作製するものが推奨されます。
ストレス管理
根本的な原因であるストレスを軽減することが重要です。
- 適度な運動
- 趣味の時間を持つ
- リラクゼーション法(ヨガ、瞑想、深呼吸など)
- 十分な休息
- カウンセリング
これらの方法で、日常のストレスを上手に管理しましょう。
睡眠環境の改善
質の良い睡眠を確保することで、歯ぎしりを軽減できます。
- 規則正しい睡眠時間
- 寝室を快適な温度と湿度に保つ
- 就寝前のリラックスタイム
- 寝る前のスマートフォンやテレビを控える
- 快適な寝具を使用する
生活習慣の改善
- 禁煙
- アルコールやカフェインの摂取を控える
- バランスの良い食事
- 規則正しい生活リズム
日中の意識
日中に歯を噛みしめていないか意識し、気づいたら力を抜くようにします。リマインダーとして、デスクや目につく場所に「リラックス」と書いたメモを貼るのも効果的です。
筋肉のリラクゼーション
顎や首、肩の筋肉をほぐすマッサージやストレッチを行います。温めたタオルで顎周りを温めることも効果的です。
噛み合わせの治療
噛み合わせに問題がある場合は、矯正治療や詰め物・被せ物の調整により改善することがあります。
ボトックス注射
重度の歯ぎしりに対して、咬筋にボトックス注射を行うことで、筋肉の過剰な収縮を抑える治療法もあります。ただし、効果は一時的で、定期的な注射が必要です。
子どもの歯ぎしり
子どもの歯ぎしりは比較的一般的で、多くの場合は成長とともに自然に治まります。ただし、激しい場合や長期間続く場合は、歯科医師に相談しましょう。
子どもの場合も、ストレスが原因のことがあります。生活環境の変化に注意を払いましょう。
放置するリスク
歯ぎしりを放置すると、以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 歯の大部分が削れてしまう
- 歯が折れる
- 顎関節症が進行し、口を開けられなくなる
- 慢性的な頭痛や肩こり
- 歯を失う
早期に対策を講じることが重要です。
歯科医院での相談
歯ぎしりの症状がある場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。歯科医師は、歯の状態を診断し、個人に合った対策を提案してくれます。
マウスピースの作製、噛み合わせの調整、生活習慣のアドバイスなど、総合的なサポートを受けられます。
まとめ
歯ぎしりは、ストレス、噛み合わせの異常、睡眠の質の低下などが原因で起こります。放置すると、歯の摩耗、破折、顎関節症、頭痛、肩こりなど、様々な問題を引き起こします。
最も効果的な対策は、歯科医院で作製するマウスピース(ナイトガード)の使用です。これに加えて、ストレス管理、睡眠環境の改善、生活習慣の見直しなど、根本的な原因に対するアプローチも重要です。
歯ぎしりの症状に気づいたら、早めに歯科医院を受診し、適切な対策を講じることで、歯と顎の健康を守りましょう。

















